Food Fraudと監査

近年食品安全を脅かす関連用語として、Food Defenseとともに言われているのがFood Fraud であり、日本語では食品偽装と訳されている。では、食品偽装とは何か?この定義については、文化・考え方などの違いから微妙に異なっている。その違いは何か?どう対処したらいいのか。

昨年2016年12月22日に、FSSC22000のVer.4がリリースされた。このVer4の追加要求事項に新たにFood Fraudの防御が盛り込まれている。日本語訳(筆者訳)は次の通り。

    2.1.4.6 食品偽装防御
2.1.4.6.1脆弱性評価
1)組織は次のような事象に対して、食品偽装の脆弱性評価のための手順を文書化し、維持しなければならない。
a) 潜在的な脆弱性の特定
b) 予防策の開発
c) 脆弱性に対し予防策の優先順位をつける。
2) 脆弱性を特定するために、組織は食品偽装の潜在的な影響について製品その受けやすさを評価しなければならない。
2.1.4.6.2 予防策
1)組織は顧客の健康を守るため、適切な予防策を講じなければならない。これらのプロセスは、
a) 食品安全マネジメントシステムの適用範囲の中で管理され、
b) 適用する法律に順守していなければならない。

ここでは、食品偽装から健康被害が発生することに対してそれ防御することを求めている。これは、違う言い方をすれば、偽装があったとしても、健康被害のないものは含まれないということになる。

さて、健康被害の有無はひとまず置いといて、そもそも、なぜ偽装を行うのだろうか?産地や品種を偽ったり、何かを混ぜて分析数値は正常であると見せかけるのも、全ては利潤追求、ひらたく言えば儲けたいからである。つまり経済的動機が必要である。これがFood Defenseとの違いである。これについては、GFSIが2014年7月リリースした「GFSI POSITION ON MINIGATING THE PUBLIC HEALTH RISK OF FOOD FRAUD」で明らかにしているし、さらに古くは2011年11月にJohn Spinkらが、Journal of Food Scienceで同様の定義をしている

Food Defense 実施すべきことは、意図的な汚染による健康被害が発生しないことである。その時、なぜ汚染を行うかに経済的動機は関係ない。例えば会社に対して不満があり、勤務中に製品を汚染させたり、レシピや表示と違うものを使用したとしても、それを実行した本人には経済的動機はない。なぜならば、動機の発端が会社への不満であり、自分の勤務している工場の商品を汚染したならば、逆に収入源になることが想定されるため経済的メリットはない。ここがFood DefenseとFood Fraudの大きな違いである。

つまり、Food Defenseは健康被害を軸として定義されており、Food Fraudは経済的動機を軸に定義されている。もちろんFood Fraudには健康被害があるもの(粉ミルクにメラミン混入)と健康被害のないもの(ブラックタイガーを大正えびといって提供)とあるが、冒頭に記したFSSC22000の追加要求事項にあるように、食品安全という範疇で考えるならば、Food Fraudは健康被害のあるものを対象として考えるべきである。

では、日本でありがちな産地偽装のような健康被害のない偽装にはどう対処したらいいのだろうか。このような問題は食品安全の問題ではなく、コンプライアンスの問題である。よって、仮に内部監査や二者監査を行ったとしても、食品安全と同じ視点で行っている限り、偽装を見抜くのは難しい。これらは食品安全とは別にコンプライアンスという視点で監査をする必要がある。

食の安全安心といわれてから久しいが、ここには健康被害について問うているもの、健康被害はないがコンプライアンスについて問うているものがある、もちろん食品事業者としてはどちらも順守しないといけないことである。従来、監査といえば、意図しない食品汚染が発生しないかを確認することが主眼となっていた。そして昨今では、これに意図した汚染に対する防御が加えられてきた。そして食品偽装である。今までの視点に単に上乗せした観点では、監査になっていないことを自覚し、コンプライアンスという視点を新たに構築する必要がある。

 

FSMA関してお話をしました

一般社団法人広島県食品工業協会主催、食の安全・安心セミナーで FSMA に関してお話しました。
今回は、FSMAに関する知識がゼロベースに方が大半だったので、以下のような内容となりました。

・FSMAが叫ばれている理由
・FSMA設立の背景・概略
・ヒト用食品に関する規則( PCHF )

これらのお話をした後に、同じフローダイアグラムを使って、HACCPでのハザード分析→HACCPプランを作成した場合と、PCHFで求められているハザード分析→予防コントロールの作成をするとどうなるかを提示し、その違いを説明しました。
今回は参加されている方の職位や時間の都合でこちらからの説明のみでしたが、次回は実務者の方をお招きしてワークショップをする予定です。

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コンサルティングとデザイン思考

どのように提示するか

ここのところ、食品産業界では色々な風が吹いていて、その中のひとつにHACCPの義務化があります。
今までHACCPを導入していない会社に対して、行政からHACCP型管理をするようにという指導が順次はいっています。
先日、そのような指導のあった会社にHACCP型管理を導入するための説明に行ってきました。
さて、今日の本題はここから。
人生の先輩方の方法や過去の導入事例からいくと、
やらなければならないことの列挙、月に1回(またはそれ以上)訪問、最終完了月日の提示、そして費用(トータル)。
こんな感じである。
実はコレをぶち破った。
どうしても変えられないのは“規格や基準で決められているやらなければならないこと”
これは仕方ない。
でも、あとは変えることができる。コンサルティングとして、やることは変えられないけどやり方は変えられる♪
さて、どう変えたか。
1.感情に訴える
2.ストーリーテリング
3.Weで語る
4.オンライン活用

こんな風に変えた

握手

1.感情に訴える
やるべきこと、やらないといけないことを頭や理屈でわかっていても、ヒトは簡単に動かない。
考えるでなくて感じる、感じてもらう。
当初のスケジュール通りに進捗していくには重要なポイント
2.ストーリーテリング
今回行うHACCP型管理の導入についてストーリーにする。
もちろん、取得したら、社会的信頼がとか得意先からとかそういうありきたりのストーリーではない。
なぜならば、これってすごく第三者目線。導入する会社の従業員目線ではない。
従業員が主人公になったらどうなるか?ゲームのタイトルだけど「リンクの冒険」をイメージしてストーリーテリングすると従業員目線になる。
3.Weで語る
経験上だが、コンサルティングの人が来て話すと、教えて指導するのは私(コンサルタント)、やるのはあなたたち(導入する会社の人たち)とYouで語る。
これではお互い共感もなければ信頼関係も成り立たない。
やはりそこはWeで語らないといけない。一緒にやっていこう!と
4.オンラインの活用
確かにかつては、現地にいって勉強会して、現地で指導してであったが、今もそうでなければならないだろうか。もちろん現地でないとできないこともある。でもそれにとらわれることもない。
現地にこだわらなければ、時間も9-17時にこだわることもない、可能性は広がってくる。

思考を変えてエキサイティングな仕事に

アウトカムは規格や基準で決められていても、そこに至るプロセスは、コンサルティングするものが自分で自由にデザインできる。
そういうデザイン思考をもたないと、結局はコスト戦争に巻き込まれ疲弊していってしまう。
そうではなくて、デザイン思考でエキサイティングな仕事にしていこう!
それを体感し提示した日だった。

Google フォームで採点して労力を減らそう

教鞭をとっている学校の授業での振り返りにgoogle フォームを使っています。
これを使うと、集計やグラフ化を自動的にしてくれるので、労力いらず。
そんな話をしていたら、何人かの方から教えて~と話があり、OJTで作り方を教えていました。
すると、ある方から「これって採点もできたらラクだよね」って話になり、
では、Google フォームを使った採点について教えたので、その内容をまとめておきます。

Google フォームを使って採点する

1.Google フォームで問題を作成
正解か否かを文字数字で判別するので、選択問題の方がふさわしい(穴埋めでもできるが一言一句合致してないと誤答となる)
2.実際のフォームの表示をクリックし、正解を入力して送信する
3.学生にフォームから回答を入力させる。
4.回答はスプレッドシートに一覧になって表示されるので、このスプレッドシートを開く
5.スプレッドシートのアドオンから”Flubaroo”をインストール
6.インストールができたら、再度アドオンを開くとFlubarooが表示されているので、これを選択し、Grade Assignmentを選択する
7.Flubarooから採点に関する事柄を聞かれるのでそれらについて回答する。
(1)聞かれる内容は、除外質問の有無、生徒を特定する情報、解答キーと得点ポイント
(2)正解のキー指定(2で正解を入力しているのでこれが一番最初に表示されるからこれを選択する)
8.これらの処理が終了すると自動的に採点され、Gradeという名称の別シートに結果が作成される。
正答率が60%以下の設問はオレンジ色の背景になり、正答率が70%を下回った生徒は赤字で示されます。なお、この生徒各自の正答率の設定は、Flubaroo→Advanced→Advanced optionで50%~95%まで5%刻みで変更することができます。

採点で苦慮しているみなさん、ぜひお試しあれ。

 

 

モニタリングには文脈がある

温度計

受入検査の温度管理

ある食品工場に監査での出来事。
監査の主旨はいわゆる、都道府県版HACCPの認証取得。
現場監査が終わり、書類の監査をしている時に事件は起こった。
それは、原材料の受入検査の記録。
その記録には原材料の温度記録があるが、基準が示されていない。
基準は別途基準表で明確にしている場合もあるので、基準はいくらですか?と聞くと、
なんと!基準がないとの回答。
基準がないなら測定する必要がないのでは?→でも●℃以上の高温だったら・・→過去にあるの?→ありません
↑こんな押し問答を繰り返しながら、なぜ測定することに至った経緯を聞くと次の通りであった。

温度管理をしている理由

この会社は、ゆくゆくはISOやGFSIの国際認証取得を目指しているため、それに関する書籍等を見ていると温度のモニタリングが必要であると書かれていたので行っているとの回答であった。
確かにその類の書籍にはそう書いてあるだろう。
しかしそれは微生物による危害というのが背景にある。
この会社の場合、該当の原材料は常温品であり、商品も常温である。
そこに温度をモニタリングしないといけない文脈はあるのか?である。
確かに夏場は輸送中に温度が上がるかもしれない。ただ、原材料の購買先は所要時間5分という距離であり輸送中での温度上昇は考え難い。さらに、高温だったら・・・のコメントで問題とされる温度でもし入荷されたとしても、全品外観チェックの際に、触感でわかる温度である。
いや、それでも温度のモニタリングが必要であるとするならば、基準が必要で、基準外の措置も決めておく必要がある。
そうでなければ、そして外観検査で判別レベルであるのならば、モニタリングが必要でないし、本当に必要かを再考しなければならない。

全ての行為には文脈がある

今回のように、ゆくゆくは国際規格の認証をと考え、それに関する書籍等を読んでいると、こうしたらいい、こうすべきということが書かれている。だが残念なことに、そうすべきということに至った文脈や背景は書かれていない。
なので、こうするという行為のみを踏襲しても、そこにある文脈まで理解していないで行うと、上記のように意味のないモニタリングとなり、さらにその分作業を増やすだけである。

予防コントロールでのモニタリング

モニタリングは危害によっては必要不可欠である。そのためには基準が存在していなければならないし、基準を逸脱したらどう処置をするかを決めておかなければならない。そしてもちろん基準外となった場合には、想定される危害によって汚染されるという文脈が必要である。
これらのことを踏まえたうえでモニタリングを組み立てないと、数値を記載しているだけとなってしましい、危害に対する効果的な予防とならないことを認識する必要がある。
さらに、HARPCでは頻度についても言及している。その頻度が適切であるのか、この機会に再考してほしい。

動画作成アドイン Office Mix

office mixとは、わかりやすくいえば、PowerPoint用の無料アドインソフトで、
動画作成ができるアドインです。
スライドとただ単に動画ファイル形式で保存するというわけではなく、
スライドに手書きで〇や下線を引くという部分プラスして動画にして保存できます。
なので、ほぼ準備完了していた授業のスライドに、この機能を付加させているところです。
これで、スライドを見せて話している時に、指し棒やレーザーポインタで指ししめす必要もなく、
また、パワポのアニメーションを使う必要もなく(このアニメーション機能が適切であるとは限らないし)
そして話すことに集中できるのではないかと予測しています。
実際にやったらどうなるか。楽しみ☆

多発する植物による食中毒

植物性自然毒による食中毒
植物による食中毒については、定期的にここでも書いていますが、
そろそろそれに気をつけないといけない時期到来。
農林水産省からも注意喚起されています。
http://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/rinsanbutsu/natural_toxins.html

採らない、食べない、人にあげない
野草を採って食べないようにと言われているにもかかわらず、
今年に入ってからも、
スイセンによる食中毒、
チョウセンあさがおによる食中毒
発生。(厚労省食中毒発生事例速報より。平成27年4月3日まで)
くれぐれも、採らない、食べない、人にあげない。

細菌性食中毒とは違う
さらに、食中毒になる原因物質「毒」は化学物質なので、加熱により効力低下はありません!
よく言われている食中毒三原則「つけない、ふやさない、やっつける」は、細菌性食中毒に対しての予防スローガンなので、間違えないように。

いつまで続く?じゃがいものソラニン
なお、食中毒統計速報によると、じゃかいもによる食中毒も報告されています。
相変わらず学校で。
じゃがいもを栽培する→食べる が危険だと認識しないといけません。

ニラはスイセンと間違いやすいのです。

昨日、”今そこにある、ニラ。「野良ニラ」を収穫せよ”という記事を紹介していた人がいた。
記事の内容は、この時期ニラが花をつけているので、花のあるうちになら収穫して自分の畑に植え替えられるよというもの。
だがしかし。
スイセンとニラと間違えたことによる食中毒は後を絶たない。
厚労省の統計によると
過去10年(平成16年~平成25年)の間に122人の患者が発生している。
そして今年の5月もニラとスイセンと間違えたという事件が起きている。
冒頭に紹介した記事にも最後の方に、ニラとスイセンは似ているので注意という主旨のことは書かれているけど、やっぱり「採らない・食べない」というのが一番イイ選択。
というわけで、みなさん、「採らない・食べない」ですよ!

記事の中に気をつけるようにと書いていてもちゃんと読まない人もいるだろうなぁと思うと、結構怖かったりするのだけど、
これは、これで内閣府食品安全委員会に報告だね。

ダニ媒介性疾患のまとめ

今日は早朝から米国CDC主催ライム病webcastがあり、それを視聴していました。

それで改めて”ダニ媒介疾患”についてまとめてみた。
今年1月日本で初めて重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の患者が発生したのをきっかけとして、ダニ媒介疾患が再び問題視されています。
SFTS以外のダニ媒介疾患としては、
日本紅斑熱、ツツガムシ病、今朝のwebcastであったライム病があり、これらは全て四類感染症に指定されています。
(四類感染症はその他にE型肝炎、A型肝炎、黄熱病、狂犬病などがあり、動物又はその死体、飲食物、衣類、寝具その他の物件を介して人に感染し、国民の健康に影響を与えるおそれのある感染症と定義されています。←このように示されるとその重大性がよくわかると思います)

CDCのライム病に関するまとめが非常によくできているので、興味のある方はどうぞ。
同じダニ媒介性疾患の予防法は参考になる、それ以上のここまで言及した方がいいよね。
http://www.cdc.gov/about/grand-rounds/archives/2011/pdfs/PHGRLymeMay2011.pdf

現在、日本では少なくともマスコミレベルでは風疹の話で持ち切り。
もちろんこれはこれで大変大切な問題。
でも、ダニ媒介性疾患もこれからがピークを迎える時期。
年間の報告件数は、2011年度平成23年度で ツツガムシ病 462件、日本紅斑熱 190件
これらの疾患に対するワクチンはなく、発症した場合重篤化することが多く、一定の抗生物質(テトラサイクリン系)しか効かないという厄介さを抱えている。
その一方で、予防することは決して難しくない。
草むらや野原に行く際には、防虫スプレーをし、長そで長ズボンを着用。肌を露出させない。
草むらに直接座らない、衣服を置かない。
帰宅したらすぐに着替える・・・等。

まだしばらくアウトドアでのレジャーの季節が続きます。
少しの注意で、自分や身の回りの人の健康を守りましょう。

じゃがいものソラニンによる食中毒がなぜこんなに頻繁に発生するのか

また、小学校でじゃがいものソラニンによる食中毒があったようです。
詳細はこちら

結論からいうと、じゃがいもの皮や芽の部分には、ソラニン(配糖体アルカロイド)が含まれているので、芽は取り除いて皮はしっかりむきましょう。
未成熟のいもは特にアルカロイドの含有量が高いので食べないこと。
ソラニンは化学物質であり、加熱しても変化しません。食中毒予防三原則で「つけない」「ふやさない」「やっつける」というのがありますが、これは細菌性食中毒をターゲットにしていわれている標語であり、ソラニンを含む化学物質には該当しません。

では、なぜこんなにじゃがいものソラニンの食中毒が頻発しているのか?
発生事例をみていると、理科の実験でじゃがいもを栽培→家庭科の実習でそれを利用する
というのが見受けられます。理科の実験でじゃがいもを栽培するのは問題ないですが、それを家庭科の実習で使うのはいかがなものか。あまりにもリスクが多きすぎる。(後述にあるが、内閣部食品安全委員会から文科省への働きかけも必要)
そして、もうひとつ。これは先日の内閣府の食品安全委員会モニター会議の席上で出ていた話だけど、もったいないから野菜の皮も捨てずに食べましょう!というのも多少なりとも影響しているようで。もちろん、食べてもいいものもあるけど、じゃがいものように食べてはいけないものもあるということを各自が認識しなければなりません。

実は、じゃがいものソラニンだけでなく、本来食べてはいけないものを知らずに・間違えて食べてしまって食中毒になったという事例を最近目にします。
例えば、アジサイの葉 ニラと水仙と間違えて  など。
むやみやたらに、自生しているものをとってきて食べるのは非常に危険。

食中毒は細菌性やノロウイルスに代表されるウイルスが原因だけではありません。食中毒になる可能性のある物質は自然界にたくさんあります。
なお、平成24年度食中毒統計(厚労省)によると、
細菌性 患者数5964名、死者8名
植物性自然毒 患者数218名 死者2名

じゃがいものソラニンだけでなく、自然毒について見直し考え直すきっかけになればと思います。