国家の強靭化からみた食料安全保障

参議院選が終了し、世間ではTPPや原発について色々と論議されている。
方向性はともかくとしてこれらの問題ももちろん重要であるが、やはり私個人的に一番気になるのは、首都圏直下型地震や南海トラフ地震にどう備えるかである。

地産地消という言葉が一般的になって随分たつ。
食育に携わっている友人に言わせると地産地消といわれるのは四里四方だそうだ。
でも、実際問題としてそれでは難しい。
数年前にヨーロッパの小学生が自分が普段食べているもの(加工品)の材料がどこで生産されているか調べて発表するという環境教育の発表会をみたことがあるが、確かその時は半径60kmだったと記憶している。実際、そのくらいのエリア内だったら、世界中から食料をかきあつめている日本にとっては十分地産地消と言えるであろう。

さて、この地産地消、食品リスクの分散という観点で考えたら真逆の考え方である。
つまり、供給してくれる地域が狭くなればなるほど、万一の時にその供給源を断たれるというリスクを孕んでいるということである。
これは、なにも上記のような大地震でなくても、台風被害などでもありえることであるが、ただ、その場合は地域が限定されているので、消費面にまで大きな影響を及ぼしていないだけである。
ではこれを冒頭の大地震で考えたらどうなるだろうか?
このような大地震が発生した時に、自分の住んでいる地域・消費地は大きな被害はなくても、供給元が大被害に遭遇し供給できなくなることもある。あるいは、消費地・供給元ともに被害がなくても、交通インフラが寸断されて“輸送”ができなくなる可能性もある。

京都大学レジリエンス研究ユニット長の藤井聡氏がまとめた自然災害等に対する脆弱性の評価結果によると、食に関する部分を見ると次のような対策がとられている(食に関する部分において一部抜粋)
○被災地での食料・飲料水等、生命に関わる物資供給の長期停止
【国交】災害に強い物流システムの構築
【農水】米穀の備蓄、企業・家庭における備蓄の推進等
○多数かつ長期にわたる孤立集落の同時発生
【国交】効果的な航路啓開等に係る関係機関等の連携の強化
【農水】応急用食料の調達可能量等調査の実施、食料・物資支援マニュアルに基づく応急用食料の調達体制の整備

災害に強い物流システムとは何か。橋脚やトンネルなど現存の交通インフラを整備するのはもちろんのこと、日本の場合、四方を海に囲まれている利点を生かし、非常時の海上輸送をもっと議論すべきであるし、場合によっては河川を利用した輸送も大いにありえる。
また、食料の備蓄も季節と利用できるエネルギー源によって、詳細に作り込む必要もあるだろう。

原理原則として、地産地消はそうあるべきだが、それはあくまでも平時の話しであって、平時が続くとは限らない。平時の時だからこそ、有事の際にどうするべきかを考えておくのが、本来の食料安全保障なのである。
近年、食品安全への要求がますます厳しくなってきているし、それにともなう運用がどうあるべきかも、様々なところで論議されている。しかしながら、これらはすべて平時の話しであり、フードチェーンにいる組織が変わりなく必要な原材料を購入できるという前提である。
その一方で食料安全保障については、行政にお任せにしていないだろうか。
食品産業に少しでも関わりのある人なら、食料安全保障について真剣に考える時期にきているのではないだろうか。

衛生管理だけでは時代おくれ

さて、先日ある食品工場の監査に行ってきました。
被監査会社は管轄の保健所から表彰されているのだから、衛生管理はバッチリ!と意気揚々。
それで、実際に監査をしたのですが・・。
確かに保健所から表彰されているだけあって、衛生管理については大きな問題はなし。
しかしそれを取り巻く運用面、特に危機管理についてを問うと、ほとんどというか全くに近いほど何もできていない。
例を挙げると次のような内容。
1.賞味期限・消費期限の設定が科学的根拠に基づいて説明できない
→1商品を例にあげてどのように科学的根拠に基づいて設定したのか説明できなければNG
2.緊急事態に備えてのしくみ
→人災、天災をはじめ自主回収に至るまで緊急事態に備えた仕組みが明文化されていなければNG。 ○○(←会社経営層)が決めることになってます!というのは仕組みがないのと同じ
3.内部統制のしくみ →いわゆる内部告発に関する仕組みがあるかどうか。原理原則としてこのしくみがあるということは会社全体として危機管理に備える体質になっている。

こんな風に意外と危機管理については、できてるつもりでも第三者から見たら出来てると言えるレベルでなかったりするものです。
このできている、できていないによる会社の風土・体質がじわじわ会社の土台を堅牢にしていくか脆くしていくか重要な部分です。

同じものを食べても、食べる時間で結果は変わる

今日、お友達の医師の方が、英国の調査で朝食を抜くと冠動脈疾患の危険が高まるかもしれないという研究発表をアップデートしてた。
それを私がみて、そうそう時間栄養学というのがあってね・・・・と話をすると、ぜひ!ということだったので、某所にて時間栄養学についてあげた原稿もとにお話したいと思います。

日本では、生活習慣病、特に糖尿病の患者が年々増え、近年ではメタボリックシンドロームも問題になっています。この原因が摂取エネルギーの増加にあると思っている人が多いかもしれませんが、実は、日本人のエネルギー摂取量は1975年頃をピークに減少を続けています。(厚生労働省の国民健康・栄養調査による)

このように、年々エネルギー摂取量が減っているのに、どうしてメタボや糖尿病が問題になるのでしょうか。原因のひとつとして、運動量の低下や高脂肪食の摂取割合を挙げる人がいるでしょう。しかし、最近は運動習慣のある人の割合が増加しはじめ、また脂質の摂取量も横ばい状態です。そうであるにもかかわらず、糖尿病は増えて続けているのはどうしてでしょうか?

国民栄養調査の結果で、糖尿病と同様に増えてきているものがあります。それは、朝食の欠食率です。これを聞くと、朝食を欠食しても3食食べているよ!という人がいるでしょうが、同じ3食でも食べ方により身体への影響が変わってきます。例えば、同じ3食でも朝食をぬいて、「昼食・夕食・夜食」という食べ方をすると、「朝食・昼食・夕食」という食べ方をしたときよりも、食事誘発性熱産生(※)が少ないことが分かっています。朝に食べたものは、身体や脳の活動を活発にするためにエネルギーとして消費されますが、夜に食べたものは脂肪として蓄積されやすいのです。このように、糖尿病やメタボなどの予防や治療を行うためには、「何をどれだけ食べたか」という従来の視点に加え、「いつ、どのように食べたか」という視点が非常に大事であることがわかってきました。よって、今後の予防や治療において、食べる事に関する時間軸は欠かせないものになりつつあります。

私たちの体温や血圧、ホルモン分泌などは、常に同じ値を保っているわけではなく、1日周期で増減を繰り返しています。この体の日周リズムは私たちとの健康と深く関与しており、もし、一日中真っ暗な部屋で過ごしたとすると、この体の日周リズムは崩れていきます。このリズムを修正するうえで大事な役割を果たしているのが、「朝の光」と「朝食」です。身体の日周リズムは、時計遺伝子によって作られていますが、この時計遺伝子は、大きくわけて、各臓器の代謝などのリズム形成に関与している「末梢時計遺伝子」と、この末梢時計遺伝子を制御して全体の調和をとる「主時計遺伝子」の2種類があります。この主時計遺伝子は朝起きて光を浴びることによって、体内時計の針を修正します。そして、末梢時計遺伝子は、朝食とともに体内時計の針が修正されます。そのため、朝食を食べないと、主時計遺伝子の制御と、末梢神経遺伝子の刻むリズムとが崩れてしまい、身体に不調をきたしてしまうことがあります。

このように、身体の日周リズムは、私たちの健康と深く関係しています。20代~40代では、「夜ふかしをして、朝食を食べないけれど、健診結果は良好だし特に不調はない」という人も多いと思います。しかし、表面的には健康でも、動脈など目にみえないさまざまなところに身体への負担が少しずつ蓄積されていきます。50代~60代になって、その蓄積が表面化してときに後悔しないよう、若いうちから規則正しい生活を心がけてほしいと思います。

※食事誘発性熱産生 食事をするときに消費するエネルギーで、DIT(Diet Induced Thermogenesisと呼ばれています。

ミッションはスクランブル発進

今週は、冲方丁氏のラノベのタイトル「マルドゥックスクランブル」のような一週間でした。

食品の理化学検査は非常に細かくその測定方法が定められています。
(食品の種類によっては微生物検査も詳しく規定されています)
さらに、食品によって測定するのに必要な物質の抽出方法、いわゆる前処理も違ってきます。
実はこれを正確に覚えておかないと、必要な数値を求めることはできません。
(方法を完全に暗記する必要はありませんが、どれを参照にしたらいいのかということを正確に覚える必要があります)
というのが、原因だったという事件があり少々走りまわっておりました。

そして、その合間に生鮮食品を扱う食品工場の監査にもあり。
監査そのものは特に問題なかったのですが、生鮮食品を扱うということで、
JAS法における生鮮食品と加工食品の違い、それにともなう品質表示基準の違いがあり、
これもこれで煩雑。
(内容は専門的になるので、興味のある方はお問い合わせください)

そして昨日、やっとゆっくり報告書等を書ける状態になったので、上記の監査のまとめをしていたところ、
監査の依頼が2件。只今日程調整中。
監査の依頼がきて、製造している食品の種類を聞くと、確認しないといけない法律やガイドライン、規格基準が芋づる式にでてくるのは職業病で(苦笑)
その芋づる式に出てきたものをリストにして、まずはそこから準備。

そして今日は、食育に関する打ち合わせ。
友人が食育に関する話をしないといけなくなり、テーマに困って相談に。
対象が大人であることと、職業として食に携わっているということを踏まえて、
Food Security 食料安全保障に少し重心を置いた話にしようと考えています。
高い安い、美味しいまずい、食中毒喚起
これら全ては、食料の入手に不自由しないという前提です。
しかし、その前提を前提のままでおいといていいのか。
それって実は重要な問題だと捉えています。

と、まぁ、いろいろあった一週間でしたが、
ワクワクな週末も迎えられそうです。

お菓子と食中毒との関係

昨日こんなニュースが入ってきた。
“団子で食中毒、後遺症に菓子業者を提訴”
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130705/trl13070518280002-n1.htm

この食中毒事件は平成23年5月に発生、原因食材は団子及び柏餅。
病因物質は腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生)患者数287名、死者1名という集団食中毒である
(厚労省集計より)

お菓子、特に今回の事件の原因食材である団子や柏餅の場合、
もち米を蒸す、餡を作る以外に生産・喫食を通してこれだけしか加熱工程がない。
そして当然のことながら常温で販売されている。
さらに、時代の流れで低糖化となっている。
このように、食中毒が発生する可能性としての要素を多く抱えているわけです。

よって、事業者のみなさんは、今まで大丈夫だったから、昔からこれでやっているからではなく、衛生管理、特に微生物については神経質なほど管理と制御を行い、
消費者のみなさんは、自分の目で安全をお店を見つける力を養いましょう。

なお、これはあくまでも全体の流れをさし示したものであり、特定の個人・組織に対して言っているわけではありません。

なぜ“ひょうたん”は食べられないのか?

2013年7月4日、大阪府下にある小学校で理科で栽培したひょうたんを食べて食中毒になったという報道があった。
最近、有害植物による食中毒事件が後を絶たないが、今回はひょうたんについてまとめてみた。

○ひょうたんはなぜ食べられないのか
ひょうたんを含むウリ科の植物は世界各国にあり、長年の歴史の中で食用に適する品種を選択してそれを栽培し増やしてきた。一般的に食用されているウリ科の植物としては、きゅうり、かぼちゃ、ズッキーニ、ゴーヤ、メロン及びすいかなどがある。(きゅうり、かぼちゃ、ゴーヤ、メロン、すいかは中国語で書くと瓜の文字がつくので、ウリ科の植物であることは一目瞭然)
そのため、食用に適してない品種つまり観賞用の品種は食用することができない。なぜならば、観賞用の植物にはククルビタシンという成分を多く含んでいるからである。
干瓢の原料となるゆうがおはひょうたんと同一種ですが食用に改良されています。

○ククルビタシンとは?
ククルビタシンはウリ科特有のステロイドの一種で、嘔吐と下痢を伴う重篤な胃及び腸不全を引き起こす可能性があり、非常にまれに死亡に至るほどの食中毒を招くことがある。また、ゴマノハグサ科(例えば、オオバコ)に含まれる苦み成分でもある。ククルビタシンは四環式テルペノイドのグループに属しており、40種類の種々のククルビタシンがあり自然に産生する。これらの苦み成分は、昆虫の攻撃から植物を保護し、同時に昆虫のステロイドホルモンに拮抗作用し、それらの成長を阻害すると言われている。

○ウリ科の植物(野菜)を食べていつもより苦いと思ったら?
無害のウリ科植物は、無味又は甘味がある。もし、食べてみていつのより苦いと思ったら食べずに吐き出すこと。まれに干瓢の原料であるユウガオに高濃度でククルビタシンが含まれており、これを食して食中毒が発生した事例が報告されており、要注意である。

○食用種ならどこで栽培されていても大丈夫?
また、注意すべきは、特に趣味の菜園で栽培されている場合又は他のヒトから提供された場合である。多くの菜園では食用のみ栽培しているのか、それともと観賞用と一緒に栽培しているのか不明である。さらに、仮に食用種のみ栽培していたとしても、自然に観賞用と交雑が起こる可能性がある。採取された種子により、翌年には苦味のあるものができる可能性がある。

素人判断は避け、誤食による食中毒から身を守りましょう。

 

※2014年7月に発生したひょうたんによる食中毒をうけて一部加筆訂正しました